博物館

ファーストキスは17歳。

2月 ① rope magic

スズキレイジさんという方に写真を撮っていただいた。

レイジさんは、緊縛写真作家。縛られた女の子の写真を撮る人。

 

もうすぐ21歳になるから、その前に「今の私」を残したかった。折角だから綺麗な写真が欲しいと思った。

 

縛られるのは初めてだった。

ずっとずっととっておいてた。

 

「緊張してる?」と聞きながら肩をさすってくれて、「少し」と答えた。

腕を後ろにやって、あ、これよく見るやつだなーと思った。縄が身体に巻きつく感覚を100%覚えておきたいのに、別のことを考えてしまう。

息を吸うと、縄がぎゅっとなって苦しい。でもそれが気持ち良くて、呼吸が速くなる。

シャッターの音がする。写真を撮られるのは苦手だったから、心配していたけれど、その必要はなかった。身をまかせるだけ。

 

私は、気持ちいいとき声をあげて笑ってしまう。あぁ〜、気持ちいなあ〜って、どっかの漫画で見た快楽殺人者みたいに。

だから、たくさん笑った。

気持ち良すぎて記憶が飛んだ。

縄が解かれて、「気持ち良すぎる」と言ったら、「まだ半分だよ」と言われた。時計を見たら、本当にまだ半分だった。

 

少し休憩して、2回目の縄。

素っ裸。

でも、それよりも、縛られていることの方が全部見られてる気になる。

今度は腕を上げて縛ってもらう。

また記憶が飛ぶ。

気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。

怖くなかった。

レイジさんは、私を世界に入れてくれる。他の人に縛られたことがないから比較はできないけれど、優しい縄。

 

「また記憶が飛びました」

「どこから記憶ない?」

 

ほんとは、ここからかなあってとこがあったけど、恥ずかしくてはぐらかした。

 

お水を飲みながら、撮ってもらった写真を見る。自分で自分が可愛いなと思えた。身体に残った縄の跡も愛おしい。

 

帰り際、抱きしめてくれて、とても嬉しかった。

ふわふわとした足取りで駅まで戻る。途中に鏡があったから、笑ってみた。「私、今日すごいことしてきたんだよ!」って心の中で言う。

駅のホームのベンチで、脚の写真を撮った。薄いグレーのストッキングの下から、綺麗な線が浮かんでいる。

 

それから数日、毎日楽しみにしながら学校に通った。写真は大体1週間後くらいに出来上がるって言われていたから。

 

ぴったり1週間後に送られてきた写真を恐る恐る見る。

可愛い。あ、この写真はまだ記憶がある、、、。可愛い。これも綺麗。

それは自分じゃないみたいなのに、確かに私で。

そっか、自分ってこんな顔をしているのね、と。

 

好きな人にも見せた。

「見ていいの?」って聞くから「早く見て!」と急かした。

「肌が真っ白で縄がよく映えてる。綺麗」

褒められると途端に恥ずかしくなる私は、彼の顔をしばらく見られなかった。

 

 私はあと少しでまた一つ歳をとる。

20歳になって、本当に色々な人に出会って、少しは大人になれた気がしている。

気分は毎日変わるし、泣いたり怒ったりする日もあるけれど、前を向いていこうと思う。

 

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1月 ② 太陽のなかで愛されたら

変わろうと思って変われるなら、もうとっくに私は想像のむこうへ行けているはずなのだった。

 

また感情がぐちゃぐちゃになって、好きな人にあたってしまった。

やさしくやさしくしたいのに、こんなにやさしくやさしくしてくれるのに。

休めって言われたけど、休みたくないって言った。今の、私の、逃げる場所だったから。

 

「結局逃げてるんです」

「そうだなあ」

 

ぜんぶ分かっていて、私の方を見てくれるのだった。

俺は見捨てないよ、見捨てたことなんかない、気まずいと思う必要はなんにもない、と言ってくれた。

きみの元気がないと俺もテンション下がるから、頼りにしてるせいでそうなるから、元気でいて、と言われた。

 

 

どんな地獄を見てきた?

どれだけ人を傷つけたり、傷つけられたりした?

 

 

私はもっと正直な人間になって、あなたと向き合いたいです。

 

 

 

 

 

 

1月 ① I will say goodbye to you

1月も半分過ぎた。

冬休みは1週間くらい実家に帰れて嬉しかった。お母さんもお父さんもお兄ちゃんも妹も、ちゃんと生きていた。

チーズタッカルビをみんなで食べた。お家で。家族5人で食卓を囲むなんてどれくらいぶりだろう。両親の仲があまり良くないから、すごく珍しいこと。

2年ぶりくらいに、高校時代の友人とも会えた。社会人の友人が多いから、素直にすごいなと思う。私は社会にちゃんと出られるだろうか。頑張りたいけど。

 

初対面の人に、自分の夢を話した。「明確で良いね」と言ってくれて、嬉しかった。明確なだけ。それだけ。

でも、私は好きなことしか、興味のあることしか、ちゃんとできないと思うから。それだけで、生きていこうと思った。多くの人とちがっても。

 

 

 

 

 

12月 ③ U-20

好きな人に怒られてばかりです。

ちゃんとしないと。期待してくれたぶん、返したい。

 

「明るい女の子になれると思ってた」

「なりたい、じゃなくて、なる。自分から明るい方に行くんだよ」

 

ほんとか嘘か分からない約束をいくつもした。

いつか答え合わせするみたいに、肌をくっつけて眠りたいよ。

 

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冬ですね。

 

 

12月 ③ ちょうどいい幸せわかんない

明日からまた大阪で、来週は仙台で、再来週の私はどこにいるんでしょうね。今年も一人で年を越さなくちゃいけなくなって、さみしい。3日には東京戻れるけども。お蕎麦茹でて、おせち作って、ジャニーズ見て、初詣でも行こうかな。

 

電話が鳴って、最近顔を見ていないお客さんからだった。どうしても年始しか休みが取れないけど、会いたいからお店にいてほしいって。「うん。分かった」って返事した。できるだけ愛には愛で返したいと思った。ばかみたいだって言われても、私はそうしたい。すきな人がとなりで見ていてくれる。

 

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 最近、デコルテにつけているバニラの香りのマッサージバー。胸元がきらきらするんだよ。 

 

 

 

 

 

12月 ② KISSとかさせてあげない

すきな人の膝におでこをのせて、すりすりしたらとっても心が落ち着いた。「マーキングすんな」って笑われて、(あ、私はこの人のこと独り占めしたいんだなあ)と他人事のように思った。

 

元彼にもらったアクセサリー入れをまだ使っている。

「もし、新しい彼氏ができて、こんなもん捨てろって言ったら、お前はどうすんの?」

「いますぐそこのごみ箱に捨てる」

お前は馬鹿だなあって言われた。そういう時は、「じゃあこれより可愛いやつ買って」って言うんだって。

 

可愛くて強い子に私はなりたいよ。

高いヒール履いて、すこしえっちな服を着て、自分の中のいちばん柔らかい部分は大切な人にだけ見せてあげるんだ。

 

 

 

 

12月 ① はやくここにきて

アイラインの引き方も知らない頃、はじめて人にはだかを見せた。

ファーストキスの1週間後。

お気に入りの、オリオン座が金の糸で刺繍してあるブラジャーをつけていた。

乱暴に外されて、なんだか悲しかった。

 

15個も年上の男の人が、「ひとりでしてるとこを見せて」というので、大きな鏡の前で服を脱いだ。

そこはほんとうなら髪を切る場所で、何人もの女の子がその椅子に座って、綺麗になってきた場所で、そんなところで、私は自分の中のいちばん汚いところを見せていた。

「なんにも知らないふりして生きていけばいい」ってその人は言った。

 

無いものにしたかった。

はじめてホテルに行った日のことも、はじめて男の人とタクシーに乗った日も、中野ブロードウェイも、渋谷駅も、池袋北口で待ち合わせもぜんぶ。

「はじめてなんです」って言うたび、心が削れた。

無いものになんてならなかった。ちゃんとずっといつだって私の中にあった。

嘘なんてつかなければよかった。

まだ間に合うかなあ。

 

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この景色を、あの人に見せたいなあって思った。