2月 ① rope magic
スズキレイジさんという方に写真を撮っていただいた。
レイジさんは、緊縛写真作家。縛られた女の子の写真を撮る人。
もうすぐ21歳になるから、その前に「今の私」を残したかった。折角だから綺麗な写真が欲しいと思った。
縛られるのは初めてだった。
ずっとずっととっておいてた。
「緊張してる?」と聞きながら肩をさすってくれて、「少し」と答えた。
腕を後ろにやって、あ、これよく見るやつだなーと思った。縄が身体に巻きつく感覚を100%覚えておきたいのに、別のことを考えてしまう。
息を吸うと、縄がぎゅっとなって苦しい。でもそれが気持ち良くて、呼吸が速くなる。
シャッターの音がする。写真を撮られるのは苦手だったから、心配していたけれど、その必要はなかった。身をまかせるだけ。
私は、気持ちいいとき声をあげて笑ってしまう。あぁ〜、気持ちいなあ〜って、どっかの漫画で見た快楽殺人者みたいに。
だから、たくさん笑った。
気持ち良すぎて記憶が飛んだ。
縄が解かれて、「気持ち良すぎる」と言ったら、「まだ半分だよ」と言われた。時計を見たら、本当にまだ半分だった。
少し休憩して、2回目の縄。
素っ裸。
でも、それよりも、縛られていることの方が全部見られてる気になる。
今度は腕を上げて縛ってもらう。
また記憶が飛ぶ。
気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。
怖くなかった。
レイジさんは、私を世界に入れてくれる。他の人に縛られたことがないから比較はできないけれど、優しい縄。
「また記憶が飛びました」
「どこから記憶ない?」
ほんとは、ここからかなあってとこがあったけど、恥ずかしくてはぐらかした。
お水を飲みながら、撮ってもらった写真を見る。自分で自分が可愛いなと思えた。身体に残った縄の跡も愛おしい。
帰り際、抱きしめてくれて、とても嬉しかった。
ふわふわとした足取りで駅まで戻る。途中に鏡があったから、笑ってみた。「私、今日すごいことしてきたんだよ!」って心の中で言う。
駅のホームのベンチで、脚の写真を撮った。薄いグレーのストッキングの下から、綺麗な線が浮かんでいる。
それから数日、毎日楽しみにしながら学校に通った。写真は大体1週間後くらいに出来上がるって言われていたから。
ぴったり1週間後に送られてきた写真を恐る恐る見る。
可愛い。あ、この写真はまだ記憶がある、、、。可愛い。これも綺麗。
それは自分じゃないみたいなのに、確かに私で。
そっか、自分ってこんな顔をしているのね、と。
好きな人にも見せた。
「見ていいの?」って聞くから「早く見て!」と急かした。
「肌が真っ白で縄がよく映えてる。綺麗」
褒められると途端に恥ずかしくなる私は、彼の顔をしばらく見られなかった。
私はあと少しでまた一つ歳をとる。
20歳になって、本当に色々な人に出会って、少しは大人になれた気がしている。
気分は毎日変わるし、泣いたり怒ったりする日もあるけれど、前を向いていこうと思う。