博物館

ファーストキスは17歳。

4月 ② もう渋谷駅を思いだせない

気持ちを中途半端に置いてきたからもやもやする。LINEのトーク画面を開いて、ながめて、すぐ閉じる。さみしいなんて連絡するのすげーダサいっておもう。まだ1週間も経っていない。たまに鳴る冷蔵庫の音に体が冷えそうになる。実際、こっちはちょっと寒い。みんな薄着だけど。

授業が始まって忙しくなればこんな感じも消えるはずだからもうすこしがんばる。
明日は晴れるといいな。昨日は濡れながら帰って、なんかつらいなって思った。

4月 ① 星だらけ

全然知らない町を自転車で走った。坂がたくさんあるところは私の地元に似ている。前はそのてっぺんに住んでいたけれど、今はその中間くらい。行きは下って帰りは上っていたけれど、その逆になる。迷子にもなる。でも少しずつ慣れて、この場所で4年間頑張ってみよう。昨日、新しいパソコンを取りに行ったときキャンパスがとてもきれいで、そう思った。

今日は入学式。いってきます。

 

3月 ⑧ 前夜

東京っぽい男の子と手を振ったあと、振り返ってさみしくなって追いかけた。ぎゅーしてくださいって言ったらコンマ数秒で抱きしめられて嬉しかった。だれかに大事にされるのがあんなにあったかいなんて。精一杯の素直さ。
屋根裏の物がどんどん減っていって、机と本棚といつも寝ているマットだけになった。持っていく荷物は思っていたより少ない。屋根裏は朝の光が眩しくて夏は暑いし冬は寒いけれど、こじんまりとした感じが大好き。また屋根裏で暮らしてみたいな。
明日の夜中に出発だ。夜桜をみてからいこう。

3月 ⑦ 瞬き

高校を卒業した。卒業証書授与の間鳴り止まない拍手がこの学校のすべてを表現していたように思う。たのしく学校に通える人ばかりではない。毎日健やかに過ごせる人ばかりではない。学校に行けなかったり、天涯孤独だったり、自分の性別が許せなかったり、こんな風でなくとも何か悩んで抱えている人が多い高校だった。だからみんな優しくて、みんな一生懸命で、どうしようもないクズもバカも受け入れちゃうような広さを持っていた。あの拍手は先生や友人や親からのよく頑張ったねってしるしなんだと思う。
私は生まれ変わるつもりで高校に入学したけれど、生まれ変わる必要なんて無かったんだって最後の最後で分かった。3年間で出会えたたくさんの人のおかげ。

付き合っていた人が証書を受け取るのを胸をくるしくさせながらずっと見ていた。部活動の先生が作ってくれたアルバムにはその人との写真ばかりが挟んであってちょっとだけ笑える。また秋が来たら複雑な気分で彼のことを思い出すんだろうけれど、今よりマシになってることを願ってる。

修学旅行も文化祭も自由参加だったから卒業文集も自由参加で、薄っぺらいA5サイズの冊子が配られた。友人の書いたメッセージがとても良くて泣きそうになってしまった。ちゃらちゃらしていたあの子や一緒に授業サボったりしていたあの子の文章を見ると、わたしも書いておいてよかったなと思う。

3年間が終わって次は4年間。高校に入学するときもこんな風に心細かった。でも、今度は少しの期待も混ざってる。桜はまだ咲いていないけど、また春が来たんだ。そしてすぐ大好きな夏になる。


3月 ⑤ やさしい光で眠りたい

「夜はともだち」というボーイズラブ漫画を読んだ。ゲイでマゾヒストな大学生のために、ノンケの同級生がサディストを演じる話。好きな人にやさしくしたいのに、やさしくすることでその人は喜ばなくて、、、という葛藤とか段々サディストを演じるのにハマってきちゃうことへの恐怖とか。
いじめられるのが好きなことにどうして理由をつけなきゃいけないの。トラウマとかがあれば安心するの。という雰囲気のセリフがあっていろいろ考えてしまった。私はもしかしたら性行為が得意ではないのかもしれなくて、どうして?って悩んできたけれど、わざわざ理由を探す必要もないのかなあと思った。9月くらいと比べたらだいぶ前向きに考えられるようになってきていて嬉しい。相手のいることだからあるか分からないけれど、もし次があったらうまくいくといいな。