博物館

ファーストキスは17歳。

10月 ③ この気持ちわかってほしいんだな

気分が優れない。理由を考えてみる。

大好きな人にあげたクッキーがたぶんあんまり美味しくなかったから。

明日のバイトにあんまり行きたくないから。

レンタルしたDVDをまた延滞しちゃったから。

今日、肌診断を体験してみたら、となりの先輩より結果が悪かったから。

 

クッキーは、元気なかったからどうしてもなにかしてあげたくって作ったんだ。自己満足だけど、ありがとうって言ってくれたから大丈夫。今度もっと美味しいの作ってあげよう。そしたら、「前のより美味しいよ」って褒めてくれるでしょ。

明日のバイトは、延長がなかったら2時間、笑顔でいたら終わってる。延長もらえたらお給料があがる。自分が楽しそうにしていたら、お客さんも楽しそうにしてくれる。きっと。

DVDは今から返しに行こう。今日返さなかったら、倍のお金を取られちゃう。

お肌はちゃんとケアしたら綺麗になるってお姉さん言ってた。小学生のときからずーっと悩んでるんだから、しょうがないよ。少しずつ、綺麗にしていこ。

 

明日はまつ毛カールの予約してるから、それ楽しみでしょ。バイトまでの時間が余ったら、美味しいお茶でも飲もうよ。あ、浅野いにおの新刊でたらしいよ。

頑張れにいこちゃん。

 

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 狩野山雪の絵。独特ですき。

 

10月 ② 最終に間に合ったよ

来月、大学の研修旅行で関西にいきます。京都と奈良は何度か行ったことがあるけれど、大阪は初めてだから楽しみ。自由な時間もあるし、個人的に観光もしようと思う。

 

知らない場所に行くのは好き。ちがう自分になれる気がする。だから、高校も大学も、絶対知り合いがいないところを選んだ。一人が好きなのも、誰かが作った私のイメージに左右されなくてすむからなんだろう。

でもね、目指しているのは、いつだって誰にもとらわれない私だよ。素直に生きていきたい。特に、自分自身に対して。

 

最近は、旅行のために休むことなくアルバイトをしていて、毎日知らない人と出会っている。印象が大切な仕事だから、こう思われたいって自分になりきるために、格好つけたり、甘えたり。こどもだったり、大人だったり。不思議と嘘をついている感覚はない。

 

店長が、「お前の笑い方はこっちが気分良くなれるから良いね」って言ってくれて嬉しかった。ちゃんとできていることも、それを見てくれていることも。

 

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もこもこヘアバンドブームです。

10月 ① 前髪だって伸びたから

心が不安定になることはだいぶん減ったけれど、いまだに泣いちゃう夜は月に一回くらいある。

 

私はいじられキャラなんです。いつもは全然嫌じゃないのに、たまにしんどくなるときがあって。一昨日は、冗談だけど「なんでここにいるの?」とか「ほんと不器用だなお前は〜」とか言われて泣きそうになってしまった。不安な顔をしてると、相手がハッとなって、ごめんね大丈夫?とか言うから、そうすると余計しんどくなって、目の奥がじんとなった。溢れないように神経を張って、なんとか堪えた。

「今日はいじられたら私泣くから」って日を作ってもいいんだよ、って言われたのにうまくできなかったな。

 

何気ないことで、店長に半袖をまくられて、傷を見られた。

「お前これ自分でやったの?」「うん、中学生のときね」

久しぶりに、自分で傷を作っちゃったことを後悔した。

情緒不安定な女だって思われたくない。それなのに、親しくなるとどんどんわがままになっちゃう自分がいるの。

 

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来世は植物に生まれたいです。

9月 ③ やさしくしてよ

また誰かを好きになることができるかなって考えている。

インスタグラムのストーリーに上がっていた、高校時代の恋人の笑顔が素敵だった。同い年なのにこどもみたいな顔。私の「好き」は、間違ってなかったと思う。うまくいかなかっただけで。

 

セックスしたいけど、したくない。誘われたら嬉しいけど、軽くみられてるのかなって悲しくもなる。ちゅーしたい。ぎゅーされたい。やさしくしてよ。

熱量がどんどん下がっていくのはさみしい。もっと一緒にいたいからって、言えなくて、返事のかわりにしたちゅーの温度がいちばん熱かった。カウンター席の下で、私の足に重ねてくれた足の裏。電車に乗るときに、おいでって引いてくれた掌。雪の日、私のコートのポッケの中でつないだ手。

 

約束がこわい。期待しないでいたい。信頼するのがこわい。だっていつか離れていくでしょう。

ほんとうは、愛とかじゃなくて、血の繋がらないだれかを心から信じるってことに飢えている。

 

次は信じられるかなあ。

 

 

 

9月 ② まだ踊り足りない

山奥に戻ってきて1週間が経ちます。

私はやっぱり東京という場所が好きだから、恋しくなってしまう。

 

今日は街に出て脱毛を契約してきた。ダイエットもしているし、もっともっと綺麗な身体になりたい。誰かのためじゃなくて、私自身のために。

 

高校生のとき、大好きなお店をつくったスタイリストのお兄さんに偶然会う機会があった。私は、「こんなに素敵なお店をつくってくれてありがとう」と「いつも見てるばっかりでごめんなさい」を言った。そうしたら、その人は「どんな服だって大人になったらいくらでも買えるよ」と言ってくれた。

忘れてた。私は、はやく大人になりたかった。

20歳になったら、お酒が飲めるようになったら、煙草を吸うようになったら、セックスできるようになったら、大人になれると私は思っていたよ。

 

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さみしいから持ってきたうさちゃん。

 

9月 ① 声をかけられる

高石宏輔さんの「声をかける」という本を読んだ。

男の人がひたすらナンパをして、そうして出会った女の子たちとのお話。なんだか身体の輪郭がぴりぴりするような本だった。苦しくなるから何度も読むのをやめて、お茶を飲み、落ち着いてからまた読むのを繰り返した。

名前も知らない、ある男の人のことを思い出した。

 

 

「お姉さん、はやく走れそうな脚してるね」

その人は渋谷のForever21の前あたりで声をかけてきた。その日の私は、お母さんのお下がりの黒いヒールを履いていて、いつもより少しだけ背筋がしゃんとしていた。

振り返った。その人の声はなんだか不思議だった。なんで声かけたのってくらい自信がなさそうで。面白かった。

「私、足遅いですよ」

 

その日は休みの日だったのかな、お店はどこもいっぱいで。適当なカフェに入って、お話をした。

彼氏いるの?とか大学生?とか色々聞かれて、聞かれるだけじゃつまらないから、その人の話を聞きたいと思った。

彼女と最近別れた話。あんまり渋谷には来ないって話。

そうだ。なんでだか忘れたけれど、私、昔引きこもってたんだよって話をした。そうしたら、俺は昔いじめられてて…って言われて。なんか可笑しかった。今まで声をかけてきた人は、大抵自信満々な感じで、多少強引にでも引き寄せるような雰囲気のある人ばかりだった。この人は違う。対極的な、弱い感じの人。お兄さん、ナンパ向いてないよって思った。

 

そのあと、バーに行った。その人の仕事の話とかを聞いていた。私の勉強の話もした。少し特殊な分野だから、面白いねって。可愛いラベルのお酒が気になって、ふたりで飲んだ。あんまり美味しくなかったっけ。

帰り際、今度デートしようって言うから、今度でいいの?と返した。主導権は私が握っていた。

 

肌荒れがコンプレックスなんだって。一緒にお風呂に入ろうと言ったら、断られた。明るいところで見ないでって。変な人。

騎乗位もバックもしたことないって。彼女とは1年半くらい付き合ってたけど。

すごく優しい人だった。痛くないかってあんまりにも気にするから、笑った。

ほんと、向いてないよって思った。

私の左の肩あたりにある傷をさすって、もうしちゃだめだよって言うのが、くすぐったかった。今までそんなこと言う人、一人もいなかったから。

 

ホテルを出て歩くと、その人が腕時計を忘れたことに気がついた。一緒に取りに行こうと言いかけて、やめた。彼の耳元で、彼女できるといいねと言った。首元の匂いを嗅ぐと、汗とその人自身の匂いがして、胸がきゅんとした。バイバイしてからは、振り返らないで駅まで歩いた。

 

名前も知らない人。

顔も覚えてないけれど、ベッドの上で私を抱きしめるときの手がすこし震えていたのを、まるで俯瞰していたみたいに思い出す。

どうしてこの人のことをこんなに覚えているのか分からない。

たまにいるんだ。宝物みたいに引っ張り出しては懐かしくなるような人。多分、魂みたいなもののかたちが似ているんだと思ってる。

 

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8月 ③ 真夜中

ブログのタイトルを変えました。気分転換。真夜中って名前は結構好きだった。ただの夜じゃなくって、みんなが寝静まった時間に布団をかぶりながらiPhoneをぽちぽちしていた。

 

今日は高校時代の先輩と、浅草にストリップを観に行った。女性のからだは綺麗だと思った。昔から、女体って美しいものだった。ギリシア神話の芸術や学問の神様は女性なんだ。ムーサとかミューズっていうの。ミュージアム(博物館)の語源は、そのムーサをまつる場所、ムーセイオンからきているらしい。

ミューズって言葉の意味は次第に変わって、画家やデザイナーの想像力を掻き立てるような女性のことを指すようにもなった。私はいつかだれかのミューズになりたい。だから、このブログの新しいタイトルを博物館にしました。

 

お母さんに「にいは変わってるから」って言われてきた。ずっと。実家に帰ってくると、いまだに言われる。私はそんなに変ですか。お母さん、私は変な方がよいですか。私が変だと楽になりますか。慰めになりますか。

 

ある人にはじめて会いに行った時、「私、よく変わってるって言われるんです」と言ったら「俺にはふつうの女の子に見えるよ」と言われて嬉しかった。その人はまっすぐに私の目を見るので、胸がざわざわした。目をそらすと、そらすなと言われた。私はそれまで、自分があんなにも人から向けられる視線が苦手だったなんて知らなかった。

 

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もものパフェ。いちじくのパフェ。