博物館

ファーストキスは17歳。

5月 ② あなたではないよ

帰り際、ケイスケカンダのブラウスのホックをとめてくれたのが嬉しかった。とめようか?って言ってくれたのが嬉しかった。
引っ越して1ヶ月が経って、誰かと話したり眠ったりして、私のからだは新しい町に馴染んできた。もう、色々なことが整ったような感じがする。
暇な時間を埋めるためにアルバイトをしようかな。学校じゃない場所で人と出会いたい。お金があると出来ることも増える。お金がすべてではないけれど。
私は私をしっかりやり遂げなくちゃいけない。

5月 ① 劣等感

どうして?の数が足りない。だらだらと生きてきてしまった証拠だ。
大学に入って、作りたいもの研究したいものが明確な人たちを見たらお腹の下あたりが冷たくなった。私にはなにもないなあと思った。なにがしたいかも分からずに来ちゃった。はやく見つけなきゃいけない。試験を受けて、一人暮らしまでして、そのエネルギーの源はどこなんだっけ。
なんとなく好き、じゃだめ。なぜそう感じたのかを考えないと。

4月 ⑤ 午前7時半

薄くて軽いんだよって言われた。生き方について。まるで自分に言い聞かせているみたいだった。
ふたり分のハンバーグを作る。ふたり分のプリンを作る。ふたり分のマグカップ。ふたり分のタオルケット。
はじまりは間違えたけれど、たのしく生きたい。
私は1限に行く。彼はまだ眠っている。

4月 ④ 夏に似ている

寝息と冷蔵庫の唸る音を聞きながら書いている。私は私が見たことのない景色を知っている人がすきだと思う。私のしらない触り方をして、私のしらないことを話して、私のしらないとこへ連れて行ってほしい。
与えられるだけじゃしんどくなるから早く何者かになりたい。どんなことでも良いけれど、この人のためにこれならできるよっていうものを身に付けたい。なんかもう、星を見て綺麗って言うだけじゃだめで、そこからなにかを生み出さなくちゃいけない。

4月 ② もう渋谷駅を思いだせない

気持ちを中途半端に置いてきたからもやもやする。LINEのトーク画面を開いて、ながめて、すぐ閉じる。さみしいなんて連絡するのすげーダサいっておもう。まだ1週間も経っていない。たまに鳴る冷蔵庫の音に体が冷えそうになる。実際、こっちはちょっと寒い。みんな薄着だけど。

授業が始まって忙しくなればこんな感じも消えるはずだからもうすこしがんばる。
明日は晴れるといいな。昨日は濡れながら帰って、なんかつらいなって思った。

4月 ① 星だらけ

全然知らない町を自転車で走った。坂がたくさんあるところは私の地元に似ている。前はそのてっぺんに住んでいたけれど、今はその中間くらい。行きは下って帰りは上っていたけれど、その逆になる。迷子にもなる。でも少しずつ慣れて、この場所で4年間頑張ってみよう。昨日、新しいパソコンを取りに行ったときキャンパスがとてもきれいで、そう思った。

今日は入学式。いってきます。

 

3月 ⑧ 前夜

東京っぽい男の子と手を振ったあと、振り返ってさみしくなって追いかけた。ぎゅーしてくださいって言ったらコンマ数秒で抱きしめられて嬉しかった。だれかに大事にされるのがあんなにあったかいなんて。精一杯の素直さ。
屋根裏の物がどんどん減っていって、机と本棚といつも寝ているマットだけになった。持っていく荷物は思っていたより少ない。屋根裏は朝の光が眩しくて夏は暑いし冬は寒いけれど、こじんまりとした感じが大好き。また屋根裏で暮らしてみたいな。
明日の夜中に出発だ。夜桜をみてからいこう。