5月 ② あなたではないよ
帰り際、ケイスケカンダのブラウスのホックをとめてくれたのが嬉しかった。とめようか?って言ってくれたのが嬉しかった。
引っ越して1ヶ月が経って、誰かと話したり眠ったりして、私のからだは新しい町に馴染んできた。もう、色々なことが整ったような感じがする。
暇な時間を埋めるためにアルバイトをしようかな。学校じゃない場所で人と出会いたい。お金があると出来ることも増える。お金がすべてではないけれど。
私は私をしっかりやり遂げなくちゃいけない。
4月 ⑤ 午前7時半
薄くて軽いんだよって言われた。生き方について。まるで自分に言い聞かせているみたいだった。
ふたり分のハンバーグを作る。ふたり分のプリンを作る。ふたり分のマグカップ。ふたり分のタオルケット。
はじまりは間違えたけれど、たのしく生きたい。
私は1限に行く。彼はまだ眠っている。
4月 ④ 夏に似ている
寝息と冷蔵庫の唸る音を聞きながら書いている。私は私が見たことのない景色を知っている人がすきだと思う。私のしらない触り方をして、私のしらないことを話して、私のしらないとこへ連れて行ってほしい。
与えられるだけじゃしんどくなるから早く何者かになりたい。どんなことでも良いけれど、この人のためにこれならできるよっていうものを身に付けたい。なんかもう、星を見て綺麗って言うだけじゃだめで、そこからなにかを生み出さなくちゃいけない。
4月 ② もう渋谷駅を思いだせない
気持ちを中途半端に置いてきたからもやもやする。LINEのトーク画面を開いて、ながめて、すぐ閉じる。さみしいなんて連絡するのすげーダサいっておもう。まだ1週間も経っていない。たまに鳴る冷蔵庫の音に体が冷えそうになる。実際、こっちはちょっと寒い。みんな薄着だけど。
授業が始まって忙しくなればこんな感じも消えるはずだからもうすこしがんばる。
明日は晴れるといいな。昨日は濡れながら帰って、なんかつらいなって思った。