博物館

ファーストキスは17歳。

9月 ③ やさしくしてよ

また誰かを好きになることができるかなって考えている。

インスタグラムのストーリーに上がっていた、高校時代の恋人の笑顔が素敵だった。同い年なのにこどもみたいな顔。私の「好き」は、間違ってなかったと思う。うまくいかなかっただけで。

 

セックスしたいけど、したくない。誘われたら嬉しいけど、軽くみられてるのかなって悲しくもなる。ちゅーしたい。ぎゅーされたい。やさしくしてよ。

熱量がどんどん下がっていくのはさみしい。もっと一緒にいたいからって、言えなくて、返事のかわりにしたちゅーの温度がいちばん熱かった。カウンター席の下で、私の足に重ねてくれた足の裏。電車に乗るときに、おいでって引いてくれた掌。雪の日、私のコートのポッケの中でつないだ手。

 

約束がこわい。期待しないでいたい。信頼するのがこわい。だっていつか離れていくでしょう。

ほんとうは、愛とかじゃなくて、血の繋がらないだれかを心から信じるってことに飢えている。

 

次は信じられるかなあ。

 

 

 

9月 ② まだ踊り足りない

山奥に戻ってきて1週間が経ちます。

私はやっぱり東京という場所が好きだから、恋しくなってしまう。

 

今日は街に出て脱毛を契約してきた。ダイエットもしているし、もっともっと綺麗な身体になりたい。誰かのためじゃなくて、私自身のために。

 

高校生のとき、大好きなお店をつくったスタイリストのお兄さんに偶然会う機会があった。私は、「こんなに素敵なお店をつくってくれてありがとう」と「いつも見てるばっかりでごめんなさい」を言った。そうしたら、その人は「どんな服だって大人になったらいくらでも買えるよ」と言ってくれた。

忘れてた。私は、はやく大人になりたかった。

20歳になったら、お酒が飲めるようになったら、煙草を吸うようになったら、セックスできるようになったら、大人になれると私は思っていたよ。

 

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さみしいから持ってきたうさちゃん。

 

9月 ① 声をかけられる

高石宏輔さんの「声をかける」という本を読んだ。

男の人がひたすらナンパをして、そうして出会った女の子たちとのお話。なんだか身体の輪郭がぴりぴりするような本だった。苦しくなるから何度も読むのをやめて、お茶を飲み、落ち着いてからまた読むのを繰り返した。

名前も知らない、ある男の人のことを思い出した。

 

 

「お姉さん、はやく走れそうな脚してるね」

その人は渋谷のForever21の前あたりで声をかけてきた。その日の私は、お母さんのお下がりの黒いヒールを履いていて、いつもより少しだけ背筋がしゃんとしていた。

振り返った。その人の声はなんだか不思議だった。なんで声かけたのってくらい自信がなさそうで。面白かった。

「私、足遅いですよ」

 

その日は休みの日だったのかな、お店はどこもいっぱいで。適当なカフェに入って、お話をした。

彼氏いるの?とか大学生?とか色々聞かれて、聞かれるだけじゃつまらないから、その人の話を聞きたいと思った。

彼女と最近別れた話。あんまり渋谷には来ないって話。

そうだ。なんでだか忘れたけれど、私、昔引きこもってたんだよって話をした。そうしたら、俺は昔いじめられてて…って言われて。なんか可笑しかった。今まで声をかけてきた人は、大抵自信満々な感じで、多少強引にでも引き寄せるような雰囲気のある人ばかりだった。この人は違う。対極的な、弱い感じの人。お兄さん、ナンパ向いてないよって思った。

 

そのあと、バーに行った。その人の仕事の話とかを聞いていた。私の勉強の話もした。少し特殊な分野だから、面白いねって。可愛いラベルのお酒が気になって、ふたりで飲んだ。あんまり美味しくなかったっけ。

帰り際、今度デートしようって言うから、今度でいいの?と返した。主導権は私が握っていた。

 

肌荒れがコンプレックスなんだって。一緒にお風呂に入ろうと言ったら、断られた。明るいところで見ないでって。変な人。

騎乗位もバックもしたことないって。彼女とは1年半くらい付き合ってたけど。

すごく優しい人だった。痛くないかってあんまりにも気にするから、笑った。

ほんと、向いてないよって思った。

私の左の肩あたりにある傷をさすって、もうしちゃだめだよって言うのが、くすぐったかった。今までそんなこと言う人、一人もいなかったから。

 

ホテルを出て歩くと、その人が腕時計を忘れたことに気がついた。一緒に取りに行こうと言いかけて、やめた。彼の耳元で、彼女できるといいねと言った。首元の匂いを嗅ぐと、汗とその人自身の匂いがして、胸がきゅんとした。バイバイしてからは、振り返らないで駅まで歩いた。

 

名前も知らない人。

顔も覚えてないけれど、ベッドの上で私を抱きしめるときの手がすこし震えていたのを、まるで俯瞰していたみたいに思い出す。

どうしてこの人のことをこんなに覚えているのか分からない。

たまにいるんだ。宝物みたいに引っ張り出しては懐かしくなるような人。多分、魂みたいなもののかたちが似ているんだと思ってる。

 

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8月 ③ 真夜中

ブログのタイトルを変えました。気分転換。真夜中って名前は結構好きだった。ただの夜じゃなくって、みんなが寝静まった時間に布団をかぶりながらiPhoneをぽちぽちしていた。

 

今日は高校時代の先輩と、浅草にストリップを観に行った。女性のからだは綺麗だと思った。昔から、女体って美しいものだった。ギリシア神話の芸術や学問の神様は女性なんだ。ムーサとかミューズっていうの。ミュージアム(博物館)の語源は、そのムーサをまつる場所、ムーセイオンからきているらしい。

ミューズって言葉の意味は次第に変わって、画家やデザイナーの想像力を掻き立てるような女性のことを指すようにもなった。私はいつかだれかのミューズになりたい。だから、このブログの新しいタイトルを博物館にしました。

 

お母さんに「にいは変わってるから」って言われてきた。ずっと。実家に帰ってくると、いまだに言われる。私はそんなに変ですか。お母さん、私は変な方がよいですか。私が変だと楽になりますか。慰めになりますか。

 

ある人にはじめて会いに行った時、「私、よく変わってるって言われるんです」と言ったら「俺にはふつうの女の子に見えるよ」と言われて嬉しかった。その人はまっすぐに私の目を見るので、胸がざわざわした。目をそらすと、そらすなと言われた。私はそれまで、自分があんなにも人から向けられる視線が苦手だったなんて知らなかった。

 

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もものパフェ。いちじくのパフェ。 

 

 

 

8月 ② 分かりたかった 満たしたかった

実家に帰ってきた。眠れないから日記を書く。やっぱり、ここじゃなくて自分の部屋のベッドが良い。洗剤と太陽の混じった匂い。実家にはもう居場所がなくって、それは別に悲しいことではないけれど、ただそういう空気があるってだけ。三人兄妹の私たちには一人部屋なんてなかった。だから、あの1Kのお部屋は私にとって、はじめて一人きりになれる場所。

 

 過去を振り返る。

最初に自慰をしたのは、実家のトイレの中だった。昔から好奇心の強い女の子だった。鏡で自分の股の間を見た。気持ち悪いと思った。おしっこを飲んでみたりした。あったかかった。電動歯ブラシを改造して、大人のおもちゃを作った。パパが買ってくれた漫画雑誌のちょっとえっちなところを何度も何度も読んだ。自慰に夢中になりすぎて、友だちとの約束を断った。

初潮には、図書館のトイレで気がついた。なぜだかお母さんに半年くらい言えなかった。途中でバレて、怒られた。それから生理は来たり来なかったりした。そうしたら、お母さんにセックスしてないでしょうねってほっぺを叩かれて、痛かった。あのとき私はたぶんまだ10歳か11歳くらいだった。

自分で手首を縛ってみた。そうすると、よく眠れた。家族に分からないように布団を被って眠る癖がついた。

13歳になった年の4月、手首を切った。そのあとすぐに学校には行かなくなった。お母さんが泣きながら、自分を傷つけるのはやめてと言った。気づかれないように、肩から二の腕あたりを切るようになった。仕事に行くお母さんを見送るとき、半袖のシャツの下から傷跡が少し見えて、乱暴に捲られた。学校のプリントを友だちが持って来てくれた。登校拒否児なのに、友だちがいるなんて不思議だった。週に一回、金曜日にはカウンセリングに行った。先生と箱庭をしたり、絵を描いたりしていた。震災があってから、行かなくなった。あの日はちょうど金曜日で、先生に会いに行く日で、私の誕生日だった。

フリースクールに通った。体育が苦手だったけれど、バドミントンが少しできるようになった。勉強は好きだった。特に国語は得意だった。

学校に行かなくなった理由は、今なら少しわかる。ただ、さみしかった。自分のことを見てほしかった。成績は学年で10本の指に入るくらいには良くて、でもお母さんはまだまだねって言うから悲しかった。部活では、先輩ができない子ばかり構うから、にいちゃんは大丈夫だよねって言うから、大丈夫なふりをした。先生は、私が学校に行かなくなったとき、どうしてお前がって顔をした。私、ずっと辛かった。大っ嫌いな体力測定の日、忘れ物をしたって自分に言い聞かせて、お家に帰った。

兄妹とは仲が悪かった。というよりも、全然喋らなかった。妹は、昔のお姉ちゃんは怖かったって今でも言う。お兄ちゃんにはTwitterで悪口を書かれた。

お父さんとお母さんは元々仲は良くなかったけれど、私が引きこもるようになってから、更に関係が悪化しちゃった。今はもう、お金の話しかしない。あれ、振り込んでね、とか。

私は高校生になった。自由な子が多くて、何かしら抱えてる子も多くて、楽だった。数学が苦手なのに、取らなくても良い数IIBまで勉強したのは、辛かった。家庭科と書道が好きだった。塾に通わせてもらっていたけれど、不真面目な生徒だった。勉強よりもバイトが楽しかった。大学に行っても良いって言われたのに、志望校はなかなか決まらなかった。3年生になってやっと、やりたいことが見つかった。大学ではその勉強をしていて、とても楽しい。

17歳。はじめてちゅーもした。セックスはうまくいかなかった。

お母さんはたぶん好きな男の人がいる。だって、メールの宛先がその人ばかりなんだ。

お父さんが夜になるとお洒落をしてどこかへ行くのを、見ていた。

 

私の心にはすきま風が通る。どんなに幸せでも、どこかさみしい。なにかが溢れていってしまう。いつも満たされない。このあいだ、ここじゃないどこかを見てるみたいと、バイト先の店長に言われた。

 

「抱きしめて」と言うとき、本当は過去の自分を慰めてほしいのかもしれない。今の私はしっかりとここに立っているけれど、あの時の私はきっと悲しそうに蹲っている。慰めることを他人に求めても良いのか、分からない。自分で乗り越えなきゃいけないのかな。だとしたら、それにはもう少し時間がかかると思う。少しずつ、昔の自分に優しくはできているけれど。

 

この文章を書きながら、涙がこぼれた。まとまりがなくてごめんなさい。でも、どこかのだれかに知ってほしくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

8月 ① 後ろ指さされたって

お母さんたちが来るというのに、床には漫画やら服やらが散らばっている。ものを捨てるのが苦手だから、気がつくといつもこうだ。でも今日は、いらない雑誌を捨てました。

 

4月くらいの自分の写真を見たら、顔が丸すぎて笑った。ちょっと痩せたね、自分。毎日体重計に乗って、少しずつ減っていくのが段々楽しくなってきた。

 

友だちに、モデルさんみたいに可愛くて目がおっきくて脚が細い女の子がいる。おまけに性格まで良くって、思わず嫉妬しちゃうくらい。

その子が、「にいはどんどん綺麗になってくね」って、ふとしたときに言ってくれて、とっても嬉しかった。たしか、学食のパン屋さんでお会計してるとき。

前までなら、上から目線って思ったりしたかもしれない。でも、あの時、素直に嬉しかった。見た目が変わるのとおんなじで、心も変わってきたのかな。

 

一年前の私と今の私は全然違う。
だから、昨日の私と今日の私も全然違うと思う。毎日なにか成長してると良いなあ。たとえ小さなことでも。

 

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ひどすぎる本棚。小説、少女漫画、エッセイ、ボーイズラブ青年漫画が一緒くた。

 

7月 ② かよわい笑い声と犬みたいな目

お客さんからもらったビールを昼間から飲んでいる。むいてないって思っていたけれど、こうして私に会いに来てくれて、お土産までくれる人がいるのは嬉しい。生きていたら、私のどこかが誰かのどこかに刺さる瞬間がある。それがどんなにいびつな部分でも。

 

今日は授業を3コマ受けたので、夕方を前にして充実した気分。天気がいいし、部屋の片付けもしよう。それから、溜まってるDVDを見なくちゃいけない。

 

今度、私の住んでいる部屋にお母さんが来るらしい。初めての事態。私の生活って他の人の目にはどううつるのかな。

お母さんが他人だって気づいたのは、割と最近のこと。

 

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