真夜中

ファーストキスは17歳。

6月 ② 寒い夜や暗い日々がつらいだけじゃないって知ってた

ふと、自動積立にしていたお金を確認したら、結構な額が貯まっていて驚いた。やっと運転免許がとれる。こんなにバイトして何になるんだろうって思ったこともあったけれど、続けて良かった。今年中は今のペースで働いて、来年は勉強と就活に集中できたらいいなあ、と思う。正直に言って、私は良くも悪くもいろんなことを受け止めてしまうから、水商売には向いていない。でも良かったのは、人と話すのが怖くなくなったこと。

 

大学もバイトもない日が3日間もあった。好きだった人とその人の恋人と後輩とお酒を飲んだ。歩いてる時に、妹みたいでほんと可愛いんだよなと言って頭を撫でられた。私は大抵、好きな人の恋人にはなれないけれど、それでもいいかと思った。

 

タオルケットを洗濯した次の日はよく眠れる。部屋のオイルをハッカとヒノキにした。ナスとトマトのカレーを作って、とうもろこしを茹でて、ビールを飲む。夏がすき。他人の家から漂ってくるにおいがいちばんおいしい季節。

 

 

6月 ① ふつうの幸せ守るの

「〇〇くんとはたとえ3人だとしても二度と会いたくない。でも、にいことはこれからも仲良くしたい。ごめんね。」

 

セックスのせいで人間関係が変わってしまうことが時々ある。

私は、3人でマリオカートしたり、たこ焼きしたり、お酒を飲んだりする時間が大好きだったから、すこしだけ怒っている。

にいこはもっと自分を大切にした方がいいよって何度も言われたけれど、この言葉をそっくりそのまま返したい。

私、いつだったか〇〇くんとセックスしたけど、なにも変わらなかったよ。変わるくらいなら、友達やめるくらいなら、私はしないよ。

 

とはいえ、私はふたりと仲が悪くなったわけではないので、これからふたりの話を聞いて、どちらの言葉にもうんうんって頷くことでしょう。

 

友情も愛情も性欲もぜんぶ一緒くたにして「すきだよ」って言いたい。

 

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突然、3日くらい実家に帰った。やっぱり落ち着く。

明日からまた学校です。

美術と向き合って、私にできることだけ見つめていよう。

5月 ③ せかす雨が降り出して

私はひとりでカラオケに行くのも、ひとりで学食を食べるのも、ひとりでどこかへ旅行するのも好き。

だけど、一人ぼっちではないと思う。

隣に座った男の子が席を立ったので、プリントを取っておいてあげたら、丁寧にお礼を言われた。なんだか嬉しかった。

 

最近、勉強していたことがつながっていくような心地がして、毎日楽しい。今まで、特に去年は、なんのためにここにいるのかわからなくなることが沢山あった。それは、点をかき集めていたからだったんだ。これからは、色んな図形を描いていける。かっこよくって、でもちょっとださくって、なんだかすべてを許せるような、そんな形にしたい。

 

 

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課題で読んだ論文にでてきた、クリムトの絵。愛が溢れてる。

 

 

5月 ② 朝のひかり

3月のライオンを観た。人は、ずっと後になって思いがけないところから救われる瞬間がある。というような台詞があって、心に沁みた。

私は今、いろんな人と出会って話して、過去の自分に優しくしている最中なのだと思う。

 

東京に帰って街を歩くと、男の人が声をかけてくる。私は、その人の心が知りたいって思う。どんな風に生きてきたの。なにか悲しいことはあった?嬉しいことはあった?好きなものは最後まで取っておくタイプですか。私のどんなところが良いと感じるのかを教えて。私はあなたの心を通して自分のことを分かりたい。

 

誰にも言えなかった真っ黒な気持ちを話せたことより、可愛いって言われたことより、抱きしめられたことより、セックスしたことより、ほっぺたをぎゅーってされたことが、帰りの電車で手を引いてくれたことが、いちばん嬉しかった。なんて変かな。

 

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5月 ① 必然のように別れて

ゴールデンウィーク。ずっと友達と過ごした。うどんを手作りしたり、スパゲッティをたくさん茹でて色んな味付けをしてみたり、酸辣湯麺を食べに行ったりした。バーベキューでマシュマロも焼いた。食べてばっかり。久しぶりに朝まで遊んで、たのしかった。

 

私は、ひとりでいる時間も、誰かと過ごす時間も、どっちも好き。

そういうことが多い。どちらかを選べない。

 

遠くで社会人をしている大好きな先輩が来てくれて、少しだけお話しできた。白黒はっきりつけなくていいんだよ、若いんだからすぐ決める必要なんてないし、味見だっていいじゃないかって言ってくれた。大人っぽくなったって褒められて嬉しかった。どこかの歯車が違えば、この人のことを好きになっていただろうなと思った。

 

今日は夕方に強い雨が降って、しばらくして止んだ。落ちかけの太陽に照らされて、草も花もぴかぴかしていた。たんぽぽの綿毛が生えていて、春が過ぎようとしていることに気がついた。

写真なんて昔はだいっきらいだったけれど、今はちゃんと写れる。

 

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4月 ③ 月くらいなら迎えに行ったのに

大学の、奥の奥の方の滅多に人が来ないようなところに、小さなソファがある。1年生の頃、私はそこで缶コーヒーを飲むのが好きで、となりでは好きな先輩が煙草を吸っていた。あれから2年が経って、おんなじ場所で、今度は私がひとりで煙草を吸っている。あんまりおいしくない。おまもりみたいに、大事に息を吸う。

 

源氏名でいるとき、ずっと嘘をついてるみたいな気がしていた。けれど、ちがうのかもって、こころもちゃんと伝わっているのかもって思えるようになった。自分の中にたくさんの顔をもった私がいることを、いつか、ちゃんと認めてあげたい。もうすこしかな。結婚式場でも働き始めたの。だれかの幸せそうな姿を見るのが好き。

 

私のこと、見てれば誰と恋をしてどんな風に離れたか分かりますよ、ってひとつ年下の男の子に言われた。分かりやすいからって。肩にふれる体温がやけに熱かった。

 

最近の毎日はおだやかで、勉強がたのしくて、こういうのを充実って言うのかなって思う。

 

 

 

 

 

 

 

4月 ② C7おさえるあなたの指

友だちといるときの私、お客さんと話すときの私、好きな人といるときの私、セックスしてるときの私。

どこにも私がいない気がしてる。

はだかになったときすら欲望に忠実に生きられない私は嘘つきだと思う。

ほんとはきれいなんかじゃないのに。

なにが怖いんだろう。

なんでこんなに満たされないんだろう。